子供服ソーイング本【こどものあそびぎ】が
発売されます。
ブランドが得意とする『職業』をテーマに
子供が好きな『ごっこ遊び』の世界に
入り込めるようなデザインや
成長を一緒に楽しめる機能を
備えた魅力あふれる『あそびぎ』を
作れる1冊となっています。
背景や想いについて著者の
玉井健太郎さん、玉井瑶子さんに
お話を伺いました。
本日はASEEDONCLÖUDの世界観に
2歳の子をもつ父、母としてのエッセンスが
加えられた新たな作品
本への想いを深堀していきます。
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Q. 今回のプロジェクトのきっかけについて教えてください
ー玉井 健太郎さん(以下、玉井さん)
もともとASEEDONCLÖUDのソーイング本として出版社さんからお話をいただいたのですが、
「せっかくソーイング本を出版するなら子ども服はどうか?」と提案したのがきっかけです。
これまでも、ファンの方や友人に
「ASEEDONCLÖUDでは子ども服は作らないの?」というお声をいただく事がありました。
これまでは、子ども服って僕にとってみたら、とてもファンタジーな世界。
こんな服を着せたら可愛いだろうなと思うことはあっても、子ども服に対してリアリティがありませんでした。
今は自分たちにも子どもが生まれ、大切な存在に洋服を作ってあげたいという想いが自然と生まれてきたので、自然な流れで子ども服の提案という形になりました。
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Q. 「こどものあそびぎ」というタイトルの経緯や想いを教えてください
ー玉井 瑶子さん(以下、瑶子さん)
ASEEDONCLÖUDもHandwerker(※)も職業や仕事着をルーツにした服づくりをしています。
今回ASEEDONCLÖUDの私たちが出版すると考えたときに、ブランドの世界観は大切にしたいと思っていました。しかし、子どもには職業はありません…。
「子どもの仕事ってなんだろう?」と考えた時に、やはり子どもは遊ぶことが大切な仕事。
せっかくなら【遊び】というキーワードをタイトルにも入れたいと思い、シンプルに【こどものあそびぎ】と付けました。
ー玉井さん
ちょうどその時のASEEDONCLÖUDのコレクションテーマが【大人の遊び着】だったんです。
『大人が真剣に遊ぶための服』を作っていた最中だったので、このテーマと対にできたら面白いなと思い、最初は【子供の仕事着】みたいなイメージで考えていたのですが、ちょっと固いなということで、話し合って【こどものあそびぎ】に決めました。
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Q.「こどものあそびぎ」とは、どんな本ですか??
ー瑶子さん
ちょうどその頃、娘が【ごっこ遊び】に夢中でした。
子どもって、本当に大人のことをよく見ていて、吸収するスピードが凄い!
ごっこ遊びを通して学ぶことって多いだろうなと思っていたんです。
大人の職業になりきって真剣に遊ぶ子どもの姿は、まさに仕事中の子ども。
そこで、この本では
Carpenter -大工 / Florist -花屋 / Doctor -医者 / Explorer -探検家 / Sailor -船乗り / Chef -料理家 / Painter -画家
の7つの職業をテーマに、それぞれの職業には欠かせないアイテムを子ども服に落とし込んでいま
す。
ASEEDONCLÖUDのアイデンティティーでもあるクラシカルな表現やディティール遊びも加えつつ、デザイン性だけでなく機能性もある、子供たちが遊びに夢中になれるような洋服を紹介しています。
ー玉井さん
あとは…この本に登場する子ども服のための、オリジナルテキスタイルを作ったことは他には無い取り組みかなと思います。
それぞれのスタイルに合った生地の特徴や風合い、色、柄を同時に作り込めた事で、より【こどものあそびぎ】の世界観を楽しんでもらえるようになった思います。
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Q. 今回のプロジェクトは瑶子さんがメインで進めてきたとお伺いしました。
その経緯をお聞かせください。
―玉井さん
やはり常に子供との時間を大切に過ごしてくれていて、一番子供への想いを表現できるのは瑶子さんなのかなと思ったので、今回このプロジェクトの企画全般をお願いしました。
なので、ブランド名を前に出すのではなく、敢えて玉井瑶子、玉井健太郎の名前で出版をしています。
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Q.プロジェクトを任された時の気持ちを聞かせてください
ー瑶子さん
このお話をいただいたのは、ちょうど育児休暇を終えて復帰したタイミングでした。
子供も保育園デビューしたばかり。
ずっと手がけてみたかった子ども服を作れる機会をいただけてすごく嬉しかったですが、
現実は、2週間おきに病気になる娘の看病で、思うように仕事が進まず精神的に参っていました。
チャンスは目の前にあるのに、いろんな方に迷惑をかけてしまうのではないかという葛藤の中、
このプロジェクトをやり遂げられるかどうか不安でいっぱいでした。
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Q.それでもやってみようと思えたのはどうしてですか?
ー瑶子さん
悩んでいるときに、先輩ママに
「子供はあっという間に自分でできることが増えてきて、親のサポートがいらなくなってくるよ。今、ママにとっては一番大変な時だと思うけど、頑張ってね。」と声をかけてもらいました。
一筋縄ではいかない子育てと、仕事の両立。任されたからにはやりとげたいという自分自身のプライド、母として、子供や家族の思い出となり、形に残していけるものが作りたいと思い、頑張ってみよう!と思うことができました。
なので、本が出来上がった時は大変だったけどやってよかったと心から思えましたね。
でも正直、本当に行き詰まった時は、家で玉井さんにイライラや不満をブツけまくってた事も事実です(笑)
ー玉井さん:苦笑い(笑)
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Q.実際に子ども服を作ってみてどうでしたか?
ー瑶子さん
この本に登場しているサンプルが、私が初めて作った子ども服でした。
子育てって『やりきった!』と思える瞬間がとっても少ないように感じるんです。
すべてが正解のない中で進んでいるというか…
なので、1つ1つ完成に近づいていく過程はすごく達成感を感じることができて楽しかったです!
育児や仕事の合間をぬって、時間を作るのは難しいことだと思いますが、
子供がおままごとする姿や、ポケットがいっぱいになるまでどんぐりを集める姿を想像しながら作るのはとても楽しい時間なので、ぜひチャレンジしてみて欲しいです。
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Q.こども服作りで大変な事はありましたか?
ー瑶子さん
型紙を写したり、裁断したり、最初の準備はちょっと大変かもしれません。
縫い始めてしまえば、パーツも小さいのであまり時間はかからないのですが…。
今回、自分が実際に作ってみたことで、読者の方に「コツやポイント」をお伝えできる事があるかもしれないと思ったので【こどものあそびぎ】のinstagramなどで発信していけたらいいなと思っています。
子どもを持つ親同士、お互い励まし合いながら一緒に作り上げていきたいですね!
出来上がった洋服もぜひ見せて欲しいです。
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Q.子ども服作りの楽しいところを教えてください。
ー瑶子さん
我が子の事を一番よく知っている身近な家族だからこそのアレンジができる点です。
例えば…公園でいつも何かを拾ってくるお子さんの場合は、ポケットを1つから2つに増やそう。とか、よく転んで怪我をするお子さんには膝当てをつけておこう!など、子どもと話しながら子どもの癖に合わせたオリジナルの1枚ができるのは、手作りならではの楽しみですね。
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Q.お手製の「子ども服」とはどういう存在ですか?
ー瑶子さん
自分が幼い頃に、母が作ってくれたビーズのネックレスや、祖母が編んでくれたセーターが大好きだったことを今でも覚えています。
自分のことを思って作ってくれたものって特別ですし、何より心に刻まれるかなと思います。
今はとても便利な時代。
なんでも安く早く手に入れることができて、私自身も頼っている部分がたくさんありますが、
たまにこれでいいのかな?と思うときがあります。
自分のためだとやらないけど、子供のためだと作りたいなと思えちゃうんですよね。
手間暇かけて、誰かの事を想って作るものって、本当に価値がありますよね!
自分の娘にも、人が想いを込めて作ってくれたものを大切にしてくれる子供でいて欲しいなと思います。
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Q. 作った「あそびぎ」をどのように着て欲しいですか?
ー瑶子さん
ぜひ、『あそびぎ』を着て親子で遊んでもらいたいです。
ごっこ遊びをするときって、対話する相手が必要ですよね?
子どもがこの服を着ている時は、ひと時家事の手を止めて「よし、あそぶ時間だ!」と思ってもらえたら嬉しいです。ぜひ、子どもの想像をどんどん膨らませてあげてください。
Q.この本を通じて皆さんにお伝えしたいことはありますか?
ー瑶子さん
ご自身で作った服が、子供の特別な一着になる。
子どもと遊ぶきっかけとしても、小さな頃を振り返る親子の思い出エピソードとしても、家族との時間をより素敵にする。
この本が、そんなきっかけになってくれると嬉しいですね。
最後に、たくさんの方にご協力していただき、私にとっても大切な本となり、自信を持ってオススメできるものとなりました。
この本は、今の私が子どもを思って作った一冊です。
子どもが大きくなった時に、彼女にとっても大切な本になればいいなと思います。
そして、この本の中の服が、誰かの大切な子どものために作った一着になれば本望です。
たくさんの愛が連鎖していって欲しいです。
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玉井さん、瑶子さん、長い時間お付き合いいただきありがとうございました。
次回は『こどものあそびぎ』のお洋服にまつわるお話と、オリジナルのテキスタイル作りに触れていきます。どうぞお楽しみに!
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<著者プロフィール >
玉井健太郎(たまい・けんたろう)
セントラルマーチンズ美術学校メンズウェア学科卒業。
ロンドンにてマーガレット・ハウエル UK のアシスタントデザイナーを経て帰国。 2010 年 S/S より
ASEEDONCLÖUD をスタート。
玉井瑶子(たまい・ようこ)
京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)卒業後、空間演出デザイン学科ファッショ ンデザインコース卒業。
大学を卒業後、ASEEDONCLÖUD でのインターンシップ を経て、2017 年より入社。商品企画に携わる。
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ASEEDONCLÖUD (アシードンクラウド)
19 世紀後期~20 世紀初頭の写真に見られる古い作業着の美しさを生かしながら、その 美しさの裏にあるアイデンティティーに、ウイットとユーモアを織り交ぜたデザインが特徴の日本のアパレルブランド。
ブランド名は、デザイナー玉井健太郎氏が子供のときに初めて創作した絵本の名前 (くもにのったたね) に由来。天然素材をベースに、毎シーズン様々な職業のライフスタイルからインスピレーションを得た デザインを展開中。
※Handwerker(ハンドベーカー)
Handwerkerとはドイツ語で“職人”。空想の職業から生まれる特別な生活着やワークウェアを作り続けるASEEDONCLÖUDから派生した小さなコレクション。